山北地区の特産品・赤カブ漬けの赤カブは、原始農法の一つ、焼畑農法で作られます。
焼畑とは、山野の草木を伐採し、乾燥させてから焼いて耕地化。数年間作付けした後、数年間放置し、再度伐採~火入れを繰り返して耕地として利用する自然農法です。焼畑は、耕地の乏しい山間部でよく行われていましたが、昭和30年代を境に「米あまりの時代」を迎えたこと、電気・ガスが普及して薪や木炭の需要が減少したことにより急激に衰退しました。現在では、村上市山北地区、山形県鶴岡市(旧西田川郡温海町)、宮崎県東臼杵郡椎葉村でみられるだけになりました。
村上市山北地区の焼畑は、杉の植林との結び付きが特徴です。優れた杉の産地であったため、山を持つ地主は杉の植林をなりわいとし、多くの人手を必要としました。そこで、山を持つ家では焼畑をしたい家に対し杉の伐採跡地を貸し、借りた家は植林を手伝うという仕組みができました。
焼畑は「焼土(しょうど)効果」により、即効的な肥料効果が得られます。さらに雑草が根絶されるため、無耕転・無除草・無肥料・無農薬・無潅水で行われます。こうして得られた耕地で作られるのが、山北地区の特産品・赤カブなのです。
赤カブは、山北地区と山形県鶴岡市の山地だけが栽培適地といわれており、他の地域や畑では独特の赤色が出ないといわれています。特に焼畑の赤カブは、紫色が濃く、形もきれいな扁平(へんぺい)になり、歯応えもいいそうです。また、焼畑で育てた作物は、普通畑の作物に比べてビタミンCの含有量が多く、糖度も高くなります。その反面、えぐみ成分のシュウ酸は1/6程度と少なく、そのため焼畑で育った作物はおいしく、栄養価も高いといわれています。
この焼畑産の赤カブを使い、作られているのが赤カブ漬けです。赤カブ漬けは、長い冬の間に食べられる保存食として食卓に欠かせない食品です。各家々に漬け方・味付けが異なり、適度な歯応えと辛みが特徴の味わい深い郷土の味です。ぜひ、お茶請けやお酒のつまみに召し上がってみてください。