村上市山北地区の特産品・赤カブができるまで。
本項では、焼畑で赤カブを育てる前段階、山焼きの工程を紹介します。
1.草刈り(7月中旬~下旬)
山焼きを行う山の斜面、杉の伐採跡地の杉枝などを片付け、種まき予定地の低木や草を鉈(なた)や鎌などで根元から刈り倒します。枝などの燃えるものが一カ所に集中しないように、中心部は厚く、周辺部は薄く調整します。現在は、おおむね杉の伐採跡地を使うため、大掛かりな伐採作業はしないようです。
2.火入れ前の準備(7月中旬~下旬)
山火事を起こすことを「火をあます」といい、そのようなことがないように細心の注意を払います。山焼き予定地以外の延焼防止のため、隣の土地との境に幅5~8mにわたり枯れ草などを取り除き、溝を掘って防火帯を作ります。これらの作業を終え、約一週間ほど乾燥させます。
3.火入れ(7月下旬~8月中旬)
火入れの準備が整ったら安全祈願が行われます。ヤマサキ(山焼きの責任者)などが大きな切り株の前で日本酒をかけながら安全と成功を祈願し、その後、代表者たちがその日本酒を飲み回すと儀式は終わり、火が付けられます。
火入れは必ず斜面上部から行います。下から点火すると風の勢いが強くなる(燃えると上昇気流が生まれ、これを「ヒカゼ」といいます)ことと、地肌しか焼けずに赤カブの生育が悪くなるためです。
火を付けてからは、山火事を起こさないよう火を操り、一晩中火の番をします。中心部が燃えてしまえば、火が飛ぶ恐れがないのでひと安心。焼きムラなどを調整しながら、ひと通り下まで焼き、焼け残ったじゃまな枝などがあれば数カ所に集め、再び焼きます。
火入れの際は風に特に注意し、強風や風向きが悪い場合は控えます。これらの悪風は、通常昼に吹き、夜には「アラシ」という良風が山の沢なりに吹き下ろします。また、夜であれば火が飛び出しても目に付きやすく、夜露が降りて火の勢いを抑えるにも好都合で作業がしやすかったようです。このため、山間部では昼よりも風が吹かない夜中(深夜0時を過ぎると風がやんだ)、海岸部では夕なぎの頃に焼いたそうです。
近年、火入れは人が集まりやすい土曜の深夜に行われることが多く、8月中旬の土曜の夜は山北各地で夏の夜空を焦がす光景が見られます。
4.焼き上がり~種まき(7月下旬~8月中旬)
焼き終わると、まだ煙が立ち昇る灰の熱いうちに赤カブの種をまきます。事前に土が硬い所は耕しておき、種を均等にまいた後は、表面を木の枝などで軽く叩きます。農具はあまり使いません。
赤カブができるまで 2 に続きます。