堆朱の歴史は大変古く、中国・唐代に始まり、平安末期~鎌倉初期に日本に伝来したといわれています。村上における堆朱の歴史は、江戸時代中期に武家のたしなみとして武士の間で始められ、以降は藩主の奨励もあり、町民にまで広く伝わって盛んになりました。
そもそも「堆朱」とはどういったものなのか。
「堆(つい)」という字には『積み重ねる』という意味があり、堆朱は朱色の漆を厚く塗り重ね、山水や花鳥を浮き彫りにしたものです。
もともとの堆朱は、漆を塗り重ねて厚みを出し、そこに彫刻を施して文様にしたものです。対して村上木彫堆朱は、芯になる木地に彫刻を施し、そこに漆を塗るという技法が採られています。この技法は江戸時代に編み出され、漆の無駄がないこと、躍動感のある彫りや細かい地紋まで表現できる、という特徴があります。
そして、村上木彫堆朱のもう一つの特徴はつやけしです。鏡面のように曇りなく、艶々と光る他の漆器に対し、村上木彫堆朱はおぼろ月の光のような奥深いつやが特徴です。しかし、普段から使用することにより、手になじんだ味わいのあるつやが生まれてきます。
長きにわたり、伝統と技法を守り続けてきた村上木彫堆朱。昭和30(1955)年に新潟県文化財に指定され、昭和51(1976)年には国の伝統的工芸品にも指定されました。近年になり、新たな技法も生み出され、現在では堆朱・堆黒(ついこく)・朱溜塗(しゅだめぬり)・色漆塗(いろうるしぬり)・金磨塗(きんまぬり)・三彩彫(さんさいぼり)の6種類の技法をひとまとめにし、村上木彫堆朱と呼んでいます。