12月上旬、村上のまちに塩引き鮭が下がる風景が広がります。塩引き鮭作りは、その家の主の仕事。作り方も一家訓ありで、こだわりの詰まった伝統料理です。
城下町であった村上では、切腹を忌み嫌い、腹を二段に分けて切る止め腹という独特な切り方をします。内臓などを取り出し、丹念に塩をすり込んで約1週間置き、流水で塩出ししたのち、風通しのいい場所に2週間ほどつるします。つるす際にも首つりを嫌い、尾から下げるのが村上流です。
塩引き鮭のおいしさの理由は、村上の気候風土が深く関わっています。晩秋から初冬にかけて、日本海の湿気を帯びた風が吹き込み、ゆっくりと鮭の身を乾燥させていきます。時間をかけて乾燥させることで、身は柔らかく、円熟したうまみが醸されるのです。
塩引き鮭は、年取り魚として大晦日の食卓を飾ります。各家の主が腕を振るった自慢の塩引き鮭で、その年の最後が締めくくられます。