この春に仕込んだばかりのしょうゆの木桶
日本海に面し、清流・荒川の河口に位置する、村上市塩谷。
かつては北前船の寄港地として栄え、経済や文化の交流地点でありました。
また、塩谷は「醸造のまち」としても知られています。
かつては、みそやしょうゆ、酒を手掛ける蔵が軒を連ねており
それが北前船に乗せられ、北海道へと運ばれていきました。
今回訪れた野澤食品工業も、かつては酒造業を営んでいたとのこと。
みそやしょうゆを造り始めたのは戦後からだそうです。
写真は、野澤食品工業の店舗(みそ・しょうゆ蔵)兼主屋。
江戸時代後期(1850年頃)に建てられたものです。
塩谷の代表的な町屋として
2016年8月に登録有形文化財(建造物)として登録されました。
※写真左のパネル
ちなみに、写真中央の【Z】*の札は焼印(やきいん)と呼ばれるもの。
ゲタ印とも呼ばれ、塩谷の家々の玄関先に掲げられています。
*野澤家の焼印はアルファベットのZのようですが、そうではなく、本来の呼び方は分からないそう
*現在は便宜上「ぜっと」と呼んでいるそうです
寄り合いなどで人が集まった際、自分のゲタを見分けるために付けたそう。
野澤家にも、かつて使われていた焼きごてが残っています。
野澤食品工業の店舗(みそ・しょうゆ蔵)。
人の背丈よりも大きい木桶の中では、しょうゆが発酵中です。
蔵の中は、みそ・しょうゆの香ばしい匂いでいっぱい。
建物も道具も長い年月を経てきたものばかりですが、みんな現役です。
建物内は見学可能なので、ぜひご覧いただきたいです。
野澤食品工業の三代目、野澤陽祐(ようすけ)さん。
父・道雄さんとともに昔ながらのみそ・しょうゆ造りを行っています。
そして、伝統の味を守る一方では新しい取り組みにも挑戦。
焙煎小麦と丸大豆を使い、長期間熟成させたしょうゆ。
酒米のこうじを用い、ワイン樽で寝かせたみそ。
歴史ある蔵の、これまで培ってきた知恵や技術といった経験と
ユニークな発想が融合して生まれた品々です。
これらの商品は、野澤食品工業の新ブランド「NOZAWA」で扱われます。
今回は、このNOZAWAの商品2点を取り上げます。
ふたなつ(300㎖ 864円・税込)
ふたなつとは、夏を二度越したという意味。
自家焙煎した小麦と丸大豆を使い、木桶で長期熟成させたしょうゆです。
長期間熟成させることで、小麦と丸大豆のそれぞれのうま味が一体となり
優しい、円(まろ)いしょうゆになります。
炒った小麦と丸大豆を合わせ、室(むろ)でしょうゆこうじを育てます。
熱した砂で焙煎した小麦は、遠赤外線の効果で甘みと香りが引き出されます。
おいしいしょうゆは赤い、という言葉もありますが
ふたなつは、まさに鮮やかな赤色。
味・香りを存分に楽しめる
かけしょうゆとしてお使いください。
ワイン樽仕込み天然醸成味噌 ふたたび(750g 1,200円・税込)
※サイズ・価格は村上市限定
「以前からワインやウイスキーの樽でみそを仕込んでみたかった」と話す陽祐さん。
プラスチックの樽では菌が住み着かず、大きな木桶では品質管理が難しい 。
そこで行きついたのがワイン樽でした。
2017年春、友人のつてを頼って手に入れたワイン樽がこちら。
原料の大豆には、新潟県産大豆のアヤコガネを。
米こうじには、こうじ菌が育ちやすい酒米を使用しています。
左の樽はたかね錦、右は五百万石とそれぞれの米こうじで仕込んでいます。
酒米を使うことで、こうじの溶けがよくなり、口触りも滑らかに。
深いこくやうま味を感じた後に、ふっとワインの香りが広がる
一風変わったみそに仕上がっています。
最後に、野澤食品工業のロングセラーを紹介。
味噌だれ千価
味噌屋が造った浅漬けの素(300㎖ 400円・税込)
生みそを使用した、みそ屋だからこそ作れた浅漬けの素。
野菜はもちろん、肉や魚の味付けにも使えます。
「豆腐にかけてもおいしい」とのこと。ぜひチャレンジを。
醸造のまち・塩谷で、実直なみそ・しょうゆ造りを続ける野澤食品工業。
そして、その伝統から軽やかに跳躍した商品を造り出す、新ブランドNOZAWA。
どちらも、村上・塩谷の味として喜ばれる逸品といえるでしょう。
野澤食品工業・NOZAWA
所在地 村上市塩谷1227
電話番号 0254-66-5507
営業時間 9:00~17:00
定休日 土・日曜日、祝日
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