淡いべっ甲色のとろりとした甘い液体。村上市大毎(おおごと)の山々に自生するイタヤカエデの樹液を煮詰めて作った、極めて希少な国産メープルシロップです。作り手の河面(こうも)専一さんが樹液の採取から製造までを手掛ける大変貴重な品、その奥深い味わいを紹介します。
(取材日:2021年1月22日・2月26日)
希少な国産メープルシロップ
現在、日本国内で流通しているメープルシロップの約95%はカナダ産といわれています。対して、日本国内で作られているメープルシロップは本当にごくわずか。河面さんが作る山専のメープルシロップも夏前にはほとんどが売れてしまう幻の存在です。
無色透明なイタヤカエデの樹液(画像提供:てまひま工房 山専)
カナダ産メープルシロップの原料はサトウカエデの樹液。しかし、日本ではイタヤカエデの樹液が使われます。イタヤカエデから樹液が採れるのは2月上旬~3月上旬のおよそ1カ月間だけ。採れはじめの樹液は糖度が高く、甘いのが特徴。次第に糖度は下がっていき、3月半ばには樹液も出なくなります。
20ℓ入るポリタンクを背負って雪山を登る(画像提供:てまひま工房 山専)
大毎は村上市内でも有数の豪雪地帯。イタヤカエデが自生する山にも、毎冬たくさんの雪が降り積もります。河面さんは自らスノーモービルを駆って山へ入り、ポリタンクに樹液を集めながら木々を巡ります。雪が厚く残る山の斜面、十数kgにもなるポリタンクを背負って移動するのは想像以上の重労働です。
淡く美しい色合いも魅力の一つ(画像提供:てまひま工房 山専)
採集した樹液は、自宅に隣接する工房でひたすら煮詰めます。無色透明で糖度も1.5%ほどしかないイタヤカエデの樹液*。これを不純物を取り除きながら、1/50程度の量になるまで火にかけます。完成したメープルシロップの糖度は約66%。透明だった樹液はべっ甲のような淡褐色に変わり、上品で甘い香りを放ちます。
*サトウカエデの樹液の糖度は約3%
「てまひま」だけが生み出せるおいしさ
撮影のためマスクを外しています
河面さんが自身の工房を開業したのは2012年10月のこと。雪山で飲んだイタヤカエデの樹液に心動かされました。「イタヤの樹液が甘いことは昔から知っていました。この樹液で自分のメープルシロップを作ってみたい。そう思い、日本メープルシロップ協会や山形県金山町でメープルシロップを作っている『暮らし考房』でシロップ作りを勉強しました。」
イタヤカエデ(画像提供:てまひま工房 山専)
工房を構えた後も、河面さんの試行錯誤は続きます。2014年の春には販売もスタートしますが、納得がいく製品が出来るようになるには5度の春を迎えなくてはなりませんでした。「樹液が採れるのは気温5~15℃、寒暖差が大きい方がいい。毎年同じ質・量が採れるわけではないので、どの工程も例年通りとはいきません。また、樹液は採取後2~3日以内に加工しなければ質が変容する、とてもデリケートなもの。シーズンが始まれば、製品が完成するまで気の休まる時はありません。」
2021年2月末、ようやくことしのメープルシロップが完成したと聞き、再び工房を訪ねました。ことしは気温の低い日が多かったため、「糖度の質の良い樹液が採れた」と河面さんは話します。2021年2月に完成したばかりのメープルシロップ、数に限りはありますが、ぜひたくさんの方に味わっていただきたいです。
河面さんのメープルシロップ・メープルサップ
ピュアメープルシロップ「楓の蜜」(50㎖)
村上市大毎周辺の山々に自生するイタヤカエデの樹液から作った希少なメープルシロップ。軽やかな甘みが特徴で、後口が重くならず爽やか。パンケーキやワッフル、プレーンヨーグルトにかけてもおいしいです。
ピュアメープルサップ「楓のしずく」(500㎖/300㎖)
メープルサップとは、加熱滅菌した樹液をそのまま瓶詰めしたもの。イタヤカエデの樹液の糖度は約1.5%。口にすると、かすかな甘みとほのかな木の香りが広がります。
お湯の代わりに沸かしてコーヒーを淹れたり、白湯にしたり、焼酎やウイスキーの割材にしたりと使い方はさまざま。サップで淹れたコーヒーはほんのり甘く、甘味料を後入れしたものとはちょっと違ったおいしさが楽しめます。一度お試しください。
てまひま工房 山専のメープルシロップ・メープルサップは、村上市内の下記店舗でも数量限定で取り扱っています。
●朝日みどりの里 物産会館
●朝日みどりの里 農産物直売所
●益甚
<村上市外>
●ナチュレ片山(本店・ピアBandai店)
http://nature-katayama.jp/[外部リンク]
てまひま工房 山専
所在地 村上市大毎627
電話番号 0254-75-2132
※工房を訪れる際は事前にお問い合わせください