
国の伝統的工芸品に指定される羽越しな布[うえつしなふ]。シナノキ等の樹皮を原料とし、平安時代に編まれた『延喜式』にも貢ぎ物の一つ*に記され、沖縄の芭蕉布[ばしょうふ]・静岡の葛布[くずふ]と並び、日本三大古代布と呼ばれています。
*信濃布[しなふ]と記されている
羽越しな布の産地は、山形県鶴岡市関川と新潟県村上市雷[いかづち]・山熊田[やまくまだ]の3カ所。山形・新潟の県境を挟み、深い山々に囲まれた集落です。古来より受け継がれし羽越しな布の今を知るため、山熊田工房を訪ねました。
取材日:2026年8月26日
山がそのまま布になる

山々に囲まれた山熊田の田んぼ(写真左の道の先には淺間神社)

(左)集落に沿うように流れる山熊田川
(右)集落入り口に掲げられた案内看板
村上市山熊田は、県道248号の突き当りにある16世帯32名(2026年8月現在)が暮らす山間集落です。集落の名は、周囲の環境とそこから得る収入の順(山>クマ>田んぼ)ともいわれていますが、今も山ではマタギによるクマ狩りが行われ、山菜や木の実といった四季折々の恵みを享受する暮らしがあります。

梅雨の頃に行われる樹皮の採取(画像提供:大滝ジュンコ)

(左)しな糸作りに川の水は欠かせない(画像提供:大滝ジュンコ)
(右)シナノキの樹皮がしな糸になるまでの過程
羽越しな布の原料であるシナノキ、オオバボダイジュ等の木々も山の恵みの一つ。木が水を貯える梅雨の頃、幹と樹皮の間に隙間が生じて樹皮がむきやすくなります。この樹皮の内側にある丈夫な繊維層(靭皮繊維)が糸になり、羽越しな布となるまでには、たくさんの工程とそれに伴う労力と時間がかかります。それでも山熊田の人々は、この布を織る文化を絶やさずに今日まで続けてきました。
羽越しな布ができるまで【1】木の選別・伐採~しな漬け・しな干し
https://www.sake3.com/shinafu/26
羽越しな布ができるまで【2】しな裂き~機織
https://www.sake3.com/shinafu/27
山熊田の暮らしに魅せられた二人

大滝ジュンコさん(写真左)と丹羽梢さん
山熊田で羽越しな布の織元・山熊田工房を営む大滝ジュンコさんと丹羽梢さん。二人は着任時期は異なりますが、村上市の地域おこし協力隊としてこの地を訪れ、山と共にある山熊田の暮らしと羽越しな布に魅了されました。
大滝さんは埼玉県出身の現代美術家。友人の誘いで訪れた山熊田の暮らしに衝撃を受け、協力隊での活動を経て2015年に定住。藍染職人の丹羽さんは東京都生まれ。協力隊として2023年から集落で暮らし、羽越しな布が出来るまでの工程と技術の継承に努めています。

2本のしな糸を、よりをかけてつなぐ「しな績(う)み」の作業

(左)シナヨリ車を使って紡錘[つむ]に巻き取り、よりをかけて均一な糸にする
(右)半年以上に及ぶしな糸作りを経て、ようやく機織が出来る
大滝さんは、羽越しな布は「山がそのまま布になっている」と話します。そして、山熊田の先人たちが木々の性質を知り、千年を超える長い時間で試行錯誤と革新を重ね、今まで受け継がれてきたという「スケールの大きさに圧倒される」とも。
大滝さんが工房を構えた理由の一つが、山と先人たちの英知の結晶である羽越しな布を次代へ残すことでした。工房では、羽越しな布の生産に加え、体験会等の企画を通じて、次の担い手や協力者を増やしていくことも大切にしています。
今の暮らしに溶け込む羽越しな布

羽越しな布 サコッシュ
羽越しな布を、現代の暮らしに合わせて使いやすいサコッシュに仕立てました。5cmのマチに内布ポケットもあって収納力はバッチリ。樹皮から生まれたしな布は耐久性があり、手洗いによる洗濯・アイロンも可能です。肩ひもは手ないのシナ縄を使い、取り外してクラッチバッグやポーチのように使用することもできます。生成りや染色、織りによるバリエーションも豊富です。

しな糸のピアス
耳元で軽やかに揺れる、しな糸で作ったピアスです。ビーズをあしらったもの、タッセル、水引のような飾り結びとタイプもさまざま。山の木々から生まれ、長い時間と手仕事によって作られる、しな糸の魅力を感じてください。
山熊田工房の商品は、下記の公式サイトのオンラインショップで購入できる他、イベントや催事等でお買い求めいただけます。イベント・催事等の情報は公式Instagramをご覧ください。
山熊田工房[やまくまだ-こうぼう]
公式サイト・オンラインショップ
https://shop.yamakumada.jp/
公式Instagram
https://www.instagram.com/yamakumada_shinahu/






