山と海。一見異なるフィールドのようですが、この二つは水を介して密接に結び付いています。山が豊かでなければ、その山の水が行き着く先、海の生物も大きく育つことができません。
この自然のつながりをより良くするため、さまざまな分野で多様な取り組みが行われています。今回紹介する2種類のクッキーも、そんな取り組みの中の小さな一つ。小さなことでも、おいしく・楽しく・こつこつ続けていくことが大切です。
(取材日:2023年5月9日・16日)
竹林整備で地域を守る
竹林から幼竹を運び出す、猿沢竹林整備組合の人たち
(左)130~200cmまで伸びた幼竹を伐採
(右)この日伐採した幼竹約30本
かつては日々の暮らしに欠かせなかった竹ですが、今では手入れの行き届かない荒廃竹林が全国的な問題になっています。昨冬、当地では積雪による倒木が大規模な停電を引き起こしました。村上市猿沢(さるさわ)では、こうした事態に備えて2016(平成28)年に猿沢竹林整備組合を結成。集落に点在する竹林の整備を行っています。
村上市地域おこし協力隊・木村綾子さん
組合では、例年5月に幼竹(ようちく)伐採を行っています。幼竹とは、人の背丈ほどに伸びたタケノコのことをいい、根元がまだ硬くないため切り倒すのも容易とのこと。切った幼竹は、村上市地域おこし協力隊の木村綾子さんが中心となり、塩漬けメンマの原料として活用されています。
幼竹を活用した塩漬けメンマ作り
伐採した幼竹はその日のうちに加工します
(左)穂先・中央部・元部と3種類に切り分けます
(右)各部位ごとに分けて煮ます
2021(令和3)年2月「猿沢産竹の利活用」のため、猿沢集落に着任した木村さん。当初より、幼竹を活用した塩漬けメンマ作りに取り組み、ことし任期最後の漬け込みを行いました。
「今、日本で食べられているメンマのほとんどが中国や台湾からの輸入品です。幼竹伐採は竹林整備の一環ですが、その幼竹を活用して塩漬けメンマを作ることは、純国産メンマ普及につながります」(木村さん)。
この日は、木村さんが募ったメンマ作り体験希望者が集まり、メンマ作りを手伝ってくれました
(左)軟らかい穂先部分は約30分煮ます
(右)煮えたばかりの幼竹を樽に敷き詰め、塩漬けに
ことしの幼竹伐採は5/8~12に実施され、各日約30本の幼竹を伐採しました。幼竹の下処理~漬け込みも同日行われ、このときは朝から晩まで作業が続きます。このメンマが食べられるようになるのは約1カ月後。塩抜きしたメンマは、発想次第でいろいろな料理や製菓材料としても利用できます。
山と海をつなぐクッキー
村上市桑川・弁天岩から見る名勝・笹川流れ
猿沢の竹林を訪ねた一週間後、今度は日本海の名勝・笹川流れへ向かいました。笹川流れ遊覧船の乗り場に併設された天ぴ屋のキッチンで、前段で紹介した幼竹の塩漬けメンマを使用した焼き菓子「のびたけクッキー」と、塩蔵モズクを使った「もずくッキー」という商品を製造販売していると聞いたためです。
笹川流れ
https://www.sake3.com/spot/78
笹川流れ観光汽船
https://www.sake3.com/spot/177
細かく刻み、塩抜きしたメンマを生地に混ぜ込み、棒状に成形して、冷凍してから切り分けます
(左)塩抜き後のメンマ
(右)仕上げに塩の結晶をのせて味のアクセントに
木村さんから幼竹の塩漬けメンマ活用を打診された笹川流れ観光汽船社長・渡辺美紀子さんは、海と山をつなぐ(海×山コネクト)クッキーを作ろうと考えました。山のものであるメンマと海のもののモズク、およそクッキーには用いない食材ですが、塩の種類や卵を全卵・黄身だけと使い分けることで、ここにしかない個性的なクッキーが誕生しました。
「山と海はつながっている。目の前の海が豊かなのは、村上の山が豊かな証しです。今回、幼竹の塩漬けメンマと笹川流れのモズクを使ったクッキーが完成し、皆さんの取り組みのお手伝いができたのもうれしかったです」(渡辺さん)。
商品紹介
のびたけクッキー
70g入り 400円(税込)
バターが香るさっくり軽い食感のクッキーに、猿沢産幼竹の塩漬けメンマを細かく刻んだものを混ぜ込んでいます。塩抜きしたメンマは、ほのかな塩味と甘みがあり、ドライフルーツのような食感。最後に一粒のせる塩の結晶(中浜観光物産の「花塩」)がクッキーの甘さを引き立てます。
中浜観光物産
https://www.sake3.com/spot/1765
もずくッキー
70g入り 400円(税込)
クッキーに笹川流れの手摘みモズクや藻塩を使った意欲作。プツリ・プツリとかみ切れる小気味いい食感、ほのかな塩味と潮の香り、軽い粘りが面白いクッキーです。お茶請けとしてはもちろん、酒のお供にもオススメ。海のミネラルを豊富に含んだモズクを手軽にいただくことができます。
紹介した「のびたけクッキー」「もずくッキー」は、笹川流れ地魚処 天ぴ屋のほか、朝日みどりの里 農産物直売所でも取り扱っています。
朝日みどりの里 農産物直売所
https://www.sake3.com/spot/1451
笹川流れ地魚処 天ぴ屋
所在地 村上市桑川975-44
電話番号 0254-79-2154(代表)
営業時間 9:00~16:00
定休日 遊覧船運航期間(3月下旬~11月中旬)無休
駐車場 60台
公式サイト
https://tenpiya.jp/