前回に引き続き、片町の商店であるが、いかにも明治色を脱した大正デモクラシー※の時代色が明らかな店構えではある。一見したところ、店舗の屋根は寄棟風の瓦葺きで、屋根上の看板は当時の看板の造り風なのか、金網を張った上に切り抜き文字を付けて立体感を演出している。
村上の瓦造りは、天保年間(1830~43)に三河(愛知県)の大浜から職人が移住してきたと伝えられ、羽黒町の新丁の坂の途中に居を構えて製造していた。はたしてこの屋根の瓦は、その瓦だろうか。
また、当時は菓子屋でビールも小売りしていて、カブトビールやヱビスビールの看板も上がっている。左側の建物は菓子竹の住宅であろうか、あるいは店舗兼住宅か、この写真では判然としない。奥の建物は一般住宅の一部であろう。可燃材の下見に可燃材の屋根のように見える。運搬具はもっぱら自転車とリヤカーに依存していたか。
人物の服装はいまだ和装を脱しきってはおらず、和洋折衷である。
※デモクラシーとは民主主義の意であるが、日常生活での人間関係における自由、平等を意味する
大場喜代司
『むらかみ商工会議所ニュース』(2018年3月号掲載)村上市史異聞 より