道路の曲がり角に立つ家か、もしくは三叉路にある家か。切妻2階建て、横長の看板には「諸車建具製造所」と大きく書き、その下に「小林工場」とある。その右に描かれているのはあんどんか。また、左には荷車らしきものが描かれている。
屋根は木羽(こば)葺きか、大屋根の上には石が置いてある。道路に面したガラス戸の下部に、すりガラスをはめている。車大工と建具職の兼業であろう。間口の広さからしても、そうした製作に適した広さではある。
椅子に腰掛けている右二人は職人か、左は女性のようである。右に立つ人物の服装は羽織袴(はかま)のようである。また左の人物は、当節はやりの自転車を立て、その自転車も買い求めたばかりの新品であろうか。
服装は判然としないが、夏物の背広か。頭には、これまた当時はやりのカンカン帽をかぶる。伝統的な和装に対する、洋風のハイカラ紳士といったところか。これまた、大正時代の風俗の一端である。
大場喜代司
『むらかみ商工会議所ニュース』(2018年5月号掲載)村上市史異聞 より